海藍(かいらん)
No.171(ランターン)
性格:いじっぱりで負けず嫌い

基本無口で無表情な男の子。
父親のDVにより、母親と日々怯える暮らしをしていた。無職の父に代わって、母親が毎日朝から晩までいくつも掛け持ちで仕事をして家を空ける事が多かった。激務で疲れている筈なのに母親は優しく、何時も海藍が父親に虐められていると庇って慰めてくれていた。海藍はそんな母親の事が大好きだった。
ある日、いつもより激しい虐待に耐えきれず海藍が泣き出してしまい、それを見た仕事帰りの母親が海藍を庇ったものの、ますますヒートアップした父親がカップラーメンを作るために沸かしていた熱湯を母親に掛けようとした。それに気付いた海藍は咄嗟に父親を押し除けて母親を守ろうとしたが、激昂した父親に熱湯が入った鍋に腕を無理矢理突っ込まされた。激痛の走る両腕に堪らず泣き叫び、母親も血相を変えて父親を制止しようとした。母親と揉み合いになり、バランスを崩した父親と一緒に倒れた海藍の背中に運悪く、熱湯が入った鍋が倒れ、結果海藍は両腕と背中に酷い火傷を負う事に。母親はすぐにでも海藍を病院へ連れてこうとしたが、「寝れば勝手に治る。病院に行く位なら酒代でも稼いでこい」と支離滅裂な事を言う父親に捕まり立てなくなるまで殴られた。その後母親は何度も海藍を家から連れ出そうとするも、その度に父親に捕まっては虐待を受けた。そのせいで海藍は適切な処置すら受けられず、皮膚は爛れ、指の皮膚は醜くくっつき、箸を持つ事が出来なくなった。
母親は海藍の火傷で出来たみみず腫れだらけの両腕と背中を見ては何度も泣いて謝り、海藍もまた、母親を泣かせてしまった事が悲しくて泣いた。
海藍の火傷による炎症が酷く、水疱が破れ異臭がする事に父親は怒り、海藍を殴っては水疱が破けて流れ出したタンパク質や血清が付いた事にまた腹を立てて殴った。
海藍が火傷を負ってからというもの、母親は海藍の火傷の治療費を稼ごうと今まで以上に仕事量を増やして寝る間も惜しまず働き続けた。
しかし長年無理をしていた体に限界が来てしまい、母親は海藍の眠っている隣で静かに死んだ。死因は過労による心臓疾患。
朝になって冷たくなっている母親を何度揺すっても目覚ます事はなく、母親の異常に気がついた父親は母親を抱えて、母親にしがみ付こうとする海藍を蹴り飛ばして外に出た。夜になって父親が戻ってきた時には、母親の姿はなかった。恐る恐る父親に母親の事を聞くと、泥だらけの手を不機嫌な顔をして洗っていた父親に「葬儀代が勿体無い。アイツは土に埋めた。」と言われた。海藍はその時限界がプッツリと切れ、ある大雨の日に父親が酒で潰れて寝ている隙に昔泣いている自分に母親がくれたお守り代わりのネックレスと、母親と一緒に撮った、たった一枚だけの写真を持ち出して家から逃げた。

宛もなく、ただ父親から少しでも離れようとがむしゃらに走り続け、気がつけば森の中にいた。海藍は木の下で座り込み、1人今後の不安と改めて自分は独りという現実に悲しくなって小さく嗚咽を溢しながら泣いた。そんな時、ある少年が海藍に声を掛けた。その少年は泣いている海藍を見るなりいきなり彼に背中を向けて、自分に乗るように言った。その少年の登場に驚きはしたものの、無表情だけど優しい眼差しと落ち着いた声に何故か直感的に「この人は悪い人じゃない」と感じ、彼の言う通りに背中に乗った。そのまま雨の中少年は傘を挿しつつ海藍をおぶって屋敷に戻った。

そこには沢山の大人と少年に少し似た、もっと幼い少年がいた。大人達は慌てた様子で海藍と少年を取り囲み、雨に濡れて冷えたからだを温めたりと適切な処置を施した。海藍が迷い込んだ森は、エルジュ君の家の敷地の森だった。

その後海藍君から事情を聞いた家の主人は、海藍の実の父親のDVを警察に通報し、父親は逮捕された。その時海藍の親権を手放させて海藍を養子として引き取る事に。こうして海藍はエルジュ君と奇鷲君と義兄弟となった。

自分を助けてくれたウォーグル家へ少しでも恩返しをしようと、沢山勉強をして名家としての立ち振る舞いも覚えた。特に自分を見つけ、保護してくれたエルジュ君には命の恩人として、エルジュ君の研究を手伝ったりする様になった。小さかった海藍君も成人し、現在はエルジュ君の秘書兼助手兼お世話掛としてエルジュ君をサポートしている。最近の家族の悩みは、エルジュ君が海藍君に研究以外の全ての事を任せすぎで、海藍君にいい人との出会いが中々見つからない事。